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事例紹介

お酒の席で問われる「冗談」―ポジションに応じた注意が必要

2014年8月15日

読売新聞2014年3月4日の記事です。

http://www.yomiuri.co.jp/job/navi/kaneko/20140227-OYT8T00561.htm

(引用はじめ)

断然多い宴席セクハラ

日本のセクハラの主戦場は、なんといってもお酒の席が断然トップです。

無礼講の場、日頃の仕事を離れた息抜きの場という日本的な宴会で、つい気の緩みからセクハラをしてしまったという例は後を絶ちません。

そんな場面でも抱きついたり、必要以上のタッチをしたりすることがご法度なのは、今や、誰もが知っています。しかし、そうした場面で場を盛り上げるための少しエッチな会話や、冗談がどこまで許されるのかは微妙な問題です。

セクハラ

悪ふざけでクビ

ある会社で、支店長でもあり取締役であった人が部下の女性たちに宴席で行ったセクハラ的な言動を理由に解雇されてしまった、というケースがあります。この支店長は、あくまでこうした言動は「自分流の交流スタイル」だったとして、それなのに懲戒解雇は納得できないとして会社を訴えた事件です。(Y社セクハラ事件 東京地裁 平成21.4.24判決)

そこで問題になった主な言動は、
<1>「この中で好みの男性は誰か」などと聞き「ノーコメント」と答えた女性に「誰がタイプか。これだけの男がいるのに、答えないのであれば犯すぞ」と言って周囲にたしなめられた
<2>「奇麗になったね。恋しているか」、「男性が女性を抱きたいと思うように、女性も男性に抱かれたい時があるやろう」などと言った
<3>そばの女性の手を握ったり、肩を抱いたりした
――などです。

調子に乗った言動

どこの宴会にもありそうな少し行き過ぎたと思われる光景ですが、これに対して裁判所は、「単なるスキンシップとか、交流スタイルで説明できるものではなく、違法なセクハラ行為である」と断定しました。

しかし、「本件宴会での一連の行為も、いわゆる強制わいせつ的なものとは、一線を画すものというべきものであること、本件宴会におけるセクハラは、気の緩みがちな宴会で、一定量の飲酒の上、歓談の流れの中で調子に乗ってなされた言動としてとらえることもできる」「悪質性が高いと解される『本件犯すぞ発言』も、女性を傷つける、たちのよくない発言であることは明白であるが、好みのタイプを言わないことに対するいら立ちからされたもので、周囲には多くの従業員もおり、真実、女性を乱暴する意思がある前提で発言されたものではない」としています。

悪意がなくともセクハラ

裁判所は、支店長の言動はあくまでお酒の席での場を盛り上げる発言であり、しかも悪質性があったとは言えないとわざわざ言っているのです。しかし、それにもかかわらず「セクハラだ」と断定していることが注目されます。

行為者男性の側からすれば、まさに場を盛り上げるためにした、ちょっとした悪ふざけであり、これがセクハラといわれたのでは、冗談も言えなくなるなどと逆ギレしそうな判決ですが、なぜこうした言動がセクハラなのでしょうか? つまり、悪気のないとされる言動であっても、セクハラだとされた理由が何かということです。

同じことをしても・・・

裁判所は、「こうした言動はいずれも、支店長という上司の立場にあったが故にできたことであって、これが『職務、職位を利用したセクシュアルハラスメント 』に該当することは明らかである」と断定しています。

つまり、言ったことがたとえ冗談の域をでないものであっても、しかるべきポジションにある人が言えば、それはセクハラになるぞと言っているのです。お分かりでしょうか、同じことを言ってもしても、人によってなったりならなかったりするのです。

支店長という力が、相手に反論を許さない状況を生み出していることが問題にされているのです。これが同僚同士の冗談であれば、許されたのかもしれません。ここでの教訓は、地位のある人は、たとえ冗談でもセクハラは厳しく問われるということです。

(なお、裁判所はセクハラと認定しつつも「何らの指導や処分をせず、懲戒解雇を直ちに選択するのは、重きに失する」と、懲戒解雇自体は無効という判断をしています)

(引用おわり)