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事例紹介

パワハラ自殺で賠償命令 日進の人材派遣会社 名古屋地裁

2014年7月10日

 

中日新聞2014年1月15日の記事です。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014011590223911.html

 

(引用はじめ)

愛知県瀬戸市の会社員原田孝幸さん=死亡時(52)=の自殺は勤務先のパワハラが原因として、遺族が勤務先の人材派遣会社「メイコウアドヴァンス」(同県日進市)と男性社長(50)らに6千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、名古屋地裁であった。

田辺浩典裁判長は「社長による暴言、暴行、退職強要のパワハラがあった」と請求を一部認め、同社と社長に計約5400万円の支払いを命じた。

判決によると、原田さんは会社の設備や機械を壊すミスをした際に、社長に殴られたり蹴られたりしたほか、退職願を書くように迫られ、2009年1月に自殺した。

田辺裁判長は「社長の暴言や暴行は仕事上のミスに対する叱責の域を超えている」と指摘。社長のパワハラで原田さんが強いストレスを受け、自殺したと判断した。

メイコウアドヴァンスの社長は「判決文を読んでいないのでコメントできない」としている。

(引用終わり)

 

この件に関しては、東海労働弁護団のHPに詳しい報告がありますので、こちらにも掲載します。

http://www.geocities.jp/tokairouben/tusin157.htm#事件4

 

 

(引用はじめ)

メイコウアドヴァンスパワハラ自殺事件

川 津   聡

 事案の概要

本件は、金属のホーロー加工を主要な業務とするメイコウアドヴァンスという会社で、度重なる暴言暴行などのパワーハラスメントと退職強要を受けていたHさんが、社長から太ももに1週間経っても消えない大きな痣が残るほどの力で蹴られるという暴行を受け、その4日後、「1000万円~1億円」という業務に関連した多額の損害賠償を一族で支払うという内容の退職願を下書きさせられるという出来事をきっかけに、さらに3日後の2009年1月某日、精神障害を患って自ら死を選んだという事件です。

原告となったHさんの妻は、Hさんの死は業務に起因するものであるとして、遺族補償給付及び葬祭料給付の申請を行いましたが、処分庁である名古屋東労働基準監督署長は、2010年2月26日付で不支給処分を決定しました。

原告は、同年4月14日付で愛知労働者災害補償保険審査官に対し審査請求をしましたが、請求から3か月を経過しても決定がありませんでした。そのため、同年8月9日付で労働保険審査会長に対し再審査請求をしましたが、これも請求から3か月経過しても決定がありませんでした。

そこで、原告は、2011年2月18日付で、遺族補償年金及び葬祭料不支給処分の取消を求めて本件訴訟を提起しました。

 本件では、使用者からの暴行と退職強要という、厚労省の「心理的負荷による精神障害に係る業務上外の判断指針」の「別表1」において、最も強い心理的負荷である「Ⅲ」の評価を受ける事由を2つも備えていました。

処分庁は、暴行と退職勧奨の存在自体は認定しました。

しかし、同時に、暴行は、全治1週間程度の診断で、受傷日以降も通常通り勤務していることなどから軽微であると認定しました。また、退職勧奨は、退職願が下書きにとどまり、使用者がHさんの意思を尊重したことなど

から強要とまでいえないと認定しました。そして、双方とも「Ⅱ」の評価に下方修正すべきだから心理的負荷の強度は「強」と総合評価できないことを理由に不支給処分としました。

それゆえ、本件の争点は、暴行と退職強要の評価にありました。

 

 判断指針は、心理的負荷の強度の判断は客観的になされるべきとしています。そのこと自体、個別の被災者の事情を無視した判断につながり、救済すべき事例を救済できないものとして批判されるべきです。

しかし、上記の処分庁の認定は、自ら作成した客観的に判断すべきという指針を不認定の結論を導くために無視して、本人の対応によって窺われる本人の内面、主観を恣意的に考慮し、ストレス強度の評価を下方修正してい

ます。

弁護団としては、この点をまず重視して、処分庁の法的な判断を争いました。

また、暴行の強度や退職強要の程度など、下方修正の根拠である事実認定にも重大な誤りがあるため、事実認定も争いました。

ここで、Hさんの死亡直前といえる2008年8月にKさんという従業員が、死亡直後の2010年3月にはIさんと言う従業員が、メイコウアドヴァンスを退職しており、会社の圧力を受けることなく中立的立場で証言す

ることを期待できました。そのため、弁護団としては、IさんとKさんに証言を依頼する方針でした。

 

 この方針の下で、原告が自ら電話をかけ、Iさんには連絡が取れませんでしたが、Kさんとは話すことに成功しました。Kさんは、Hさん同様にメイコウアドヴァンスで働くうちに精神を患い、治療のために長期間休養を

余儀なくされていました。そのため、Kさんは、書面による不十分な事情聴取しか受けていませんでした。弁護団がKさんに聴き取りのため面会してくれるように頼んだところ、2011年10月9日、面会が実現しました。

その席で、Kさんは、メイコウアドヴァンスの社長の暴行は日常的にあり、その内容も頭を平手で叩くといったものにとどまらず、製品で腕を殴るなど、大けがをさせかねないものまであったこと、Kさん自身が7000万

円に上る多額の損害賠償を支払うように要求され、そのような要求をするときの社長の様子はおそろしかったことなどを話してくれました。しかも、Kさんは2011年の4月ころ、労働局に呼び出され、その席で弁護団に

対して話したことと同じことを話したと言うのです。

 

 Kさんから労働局が聴き取りを行ったのは本件訴訟提起後と推測されました。他方、弁護団にそれが判明するまでに少なくとも2回の期日がありました。しかし、それまで国は、聴き取りがあったことに期日でも期日外で

も全く触れていませんでした。

 

 弁護団は、2011年10月12日、上申書を提出し、国はKさんの聴取書があれば提出するように求めました。

すると、国は、同年10月18日、前向きに検討すると回答し、その次の期日に先立って、11月上旬、Kさんの聴取書を証拠提出して開示しました。社長の暴行、暴言が日常的に行われていたことをはっきりと述べる内容

でした。また、上申書提出の翌日である10月13日に、国がKさんに電話をかけて追加の聴取を行ったことも判明しました。

弁護団は、それら聴取内容などに基づいて原告の主張を補充し、第5回期日に臨みました。

 同年12月16日、第5回期日において、裁判官が被告側に今後の主張立証の予定を尋ねると、国側の代理人は、「結論から言うと、自庁取消、改めて認定」する旨を述べました。

一瞬、国側の代理人を除くその場の誰もが、何が起きたのか飲み込めませんでした。裁判官も若干驚いた様子で、「自庁取消ですか」と確認しました。

国が自ら誤りを認めた瞬間でした。

 

 その後、労働局から、原告に対し、今回の事態の経緯を説明したいとの申出があり、同年12月27日、名古屋南部法律事務所の会議室において、労働局長と労基署次長から、弁護団と原告、支援者が説明を受けました。

当初、行政の側から、自庁取消に至った経緯の概要と、改めて行われる支給決定の時期と内容が語られました。それによれば、聴き取りによって新たな事実が判明したためそれまでに判明していた事実と合わせて再評価した

ところ、心理的負荷が「強」であったとの結論に至ったためであるとのことでした。

その日、その後のやりとりで、行政の側から以下の諸点が回答されました。

・新たな事実とは日常的に暴力が振るわれていたことや、弁済の要求がされていたことを指す。

・聴き取りの実施は「裁判のための確認」であり、労働局、訟務検事、法務局と打ち合わせて決定した。

・聴取書の内容は、労働局と法務局だけでなく本省まで知っていた。

・10月13日のKさんへの電話はこちらの上申書提出以前から決まっていた。

・上申書提出段階では再検討中だったが結論が出ていなかった。

・再検討中と知らせなかったのは訴訟中に再検討になる経験がなかったためである。

・5月から10月にかけては本省も含めて各方面への影響の検討や要確認事項の確認などを行っていた。

また、今後の対応について、労働局長と労基署次長は、第三者の供述を重視して事実関係の確認を慎重に行うと言明しました。

なお、改めての支給決定は、2012年1月11日に行われる予定とのことでした。

 

 2012年1月、原告の下に、名古屋東労働基準監督署から、遺族補償年金支給決定と葬祭料支給決定の通知が届きました。

そこには、再調査によって明らかになった事実として、以下の諸点が指摘されていました。

・メイコウアドヴァンス社長とその妹である従業員からの聴き取りから、Hさんが家庭内の問題で悩んでいたことを認定したが、KさんとIさんはそうした話を聞いたことはないと述べており、社長と妹は「事実とは異なる

ことを述べていた可能性」がある。

・社長は暴力的行為を否定し、妹も社長が穏やかな人物であることを述べていたが、社長はHさんの精神障害発病の約6か月前から継続的に従業員を怒鳴り散らしたり鉄パイプで床や壁を叩いて威嚇したりHさんを蹴るなど

して、労働者が定着せず人手不足となる原因を作っており、そのために仕事上のミスが多発していた。また、妹自身もHさんを怒鳴り、蹴っていた。

・社長は、設備の破損等による損害についてHさんに弁償を強要していたことを否定し、妹も損害は会社が負担していると述べていたが、HさんとKさんは、しばしば社長から辞めるなら弁償しろ、身内にも請求すると脅さ

れ、辞めたくても辞められない状況にあったと述べている。

・Kさんの退職後、社長の脅迫的言動はHさんに集中したとIさんは述べている。

・Iさんは、最初の調査時には死ぬ直前Hさんに会っていたことを黙っていたが、再聴取時に、「自身が当該事業場を退職していたこともあるのか」、会っていたことを認めた。その際、Iさんは、退職願の下書きを見せら

れ、また、Hさんがかなり落ち込んでいた様子であったと、述べている。

・処分庁は、最初の調査時、社長の妹を一般の従業員であると認識していたが、社長の妹であり、会社の監査役であったと判明した。

 

10 本件の問題点として、以下の諸点を指摘できると思います。

・国が、裁判の準備として、すでに処分時に十分に終えていなければならないはずの調査を改めて行っている事実が明確になりました。

・その結果、再調査、自庁取消に至ったことは、結局、労災不認定時に調査が不十分であったことを示しています。

・特に、社長の妹を血縁のない一般の従業員と認識していた事実は、にわかに信じられないほどの杜撰さです。

・仮に、社長の妹が一般の従業員だったとしても、会社内部で社長の圧力を受けるかもしれない立場の従業員の言葉が、社長の言葉と一致したに過ぎません。それを理由に、安易に社長の述べる嘘を真実と認定してしまった

事実認定の手法や態度には、重大な問題があります。

・また、本件では、Kさんからの聴取内容は、処分庁の事実認定を覆すことが明白な内容でした。このような聴取結果を本省まで含めて共有していながら、原告側に一切を黙っていた国の応訴態度は、極めて不誠実です。国

は少なくとも再調査終了まで期日の延期を申し出るべきでした。

・さらには、原告側から上申書が出なかったら聴取結果を隠すつもりだったのではないかという疑念を未だ拭えません。国は、この疑念を払拭すべく、同様な事態の再発防止のために必要な対策を真摯に検討し、実行すべき

です。

 

11 弁護団は、国の姿勢に対する社会的批判を促すため、3月14日に記者会見を行い、これまでの経緯を記者に対して発表しました。

また、メイコウアドヴァンスは現在もなおHさんを死に追いやった自己の責任を認めず、本件の原告からの損害賠償請求を拒んでいます。弁護団は、メイコウアドヴァンスの責任を法的に追及する方針ですので、今後もご支

援をいただけると幸いです。

弁護団は、濵嶌将周を主任として、岩井羊一、川津聡です。

(引用終わり)

 

詳細を見ていくと、日常的に暴行が加えられ、法外な損害賠償の要求が社長からあったことが分かります。

そして、裁判の途中で労災認定において国が自ら過ちを認めるという珍しいケースになっています。

 

また、この報告から、日常的にパワハラが行われるこの会社の構造が見て取れます。

・恒常的にパワハラ《暴行》が行われること。

・法外な損害賠償を従業員にすること。

・何人も同じようにパワハラ行為が行われること。

・判決を得ても、なおさら損害賠償請求に応じないこと=違法行為に関する感覚が麻痺していること。

 

 

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