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事例紹介

「訴えてやる!」セクハラ裁判、慰謝料相場はどれくらい?

2017年5月27日

 剣道女子の西山温子弁護士が、剣道の試合になぞらえて3本勝負で法律の知識を伝授。今回は過去のセクハラ裁判の事例を解説します。

壱本目! 知事や営業所長が被告に、過去の裁判の実例を知る

裁判では必ず「慰謝料」が取れるとは限りません。でも、もし訴えたら慰謝料がどの程度かは気になりますよね。今までどんな裁判で慰謝料が認められたのか、見てみましょう。

(1)日本初のセクハラ裁判は1989年

日本で初めて職場のセクハラを原因とした裁判が起こされたのは、1989年のこと。

出版社にアルバイトで採用された女性が、上司から「結構お盛んらしい」と、異性関係が乱れているかのような噂(うわさ)を流されたという事案です。これは、前回のセクハラいろいろで紹介した「環境型セクハラ」ですね。女性は退職し、一審では合計165万円の慰謝料が認められました。加害者本人だけではなく、会社の責任が問われたことも注目に値します。

(2)知事が被告に、責任を認めず慰謝料が高額に

知事が被告になった裁判例もあります。選挙運動で走行中のワゴンの中で約30分間にわたり、原告女性の下着の中に手を入れ、強制わいせつ罪として刑事告訴もされています。慰謝料は1000万円、かなりの高額です。被告が会見で、責任を認めず自分は陥れられていると発言したことも、慰謝料の増額要因とされました。

(3)被害者側の「落ち度」が相殺され、慰謝料が減額

職場の飲み会で、営業所長ら3人の男性が、従業員の女性たち7人に対し、背後から抱き付く、抱き付いた姿勢での写真撮影を強要する、床に押し倒してその上に馬乗りになるなどのセクハラ行為があったというもの。被害の大きさに合わせて各原告に80~250万円の慰謝料が認められました。

この裁判例のポイントは、「過失相殺」が認められた点。一緒になって盛り上がり、セクハラ行為をあおった女性側にも落ち度があるとして、慰謝料減額が認められました。お酒の席だからと調子を合わせることもありそうですが、落ち度と判断されてしまうこともあるのです。

「リーガ~ルポイント」
セクハラの慰謝料は数十万円から1000万円まで様々。「過失相殺」に注意して

弐本目! 職場におけるセクハラ……慰謝料の相場はどれくらい?

 一口にセクハラの裁判例といっても、その状況は様々で、慰謝料額に明確な相場はありません。ただし、裁判例が重視している要素を見ると、一定の「傾向」が見えます。

例えば(2)のように、一般に身体的接触を伴い、特に強姦(ごうかん)や強制わいせつといった犯罪に該当するような悪質な事案では、慰謝料は高額になる傾向があります。また、1回きりなのか、年単位で継続しているのかという観点からも、軽重が決まります。

結果の重大性も裁判所が着目する要素です。(3)のように、一緒になって騒いだと見なされたケースでは減額もされていました。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したケース、退職に追い込まれたケース、パワハラが併存しているケースと比べれば、慰謝料は少なくなる傾向があります。

「リーガ~ルポイント」
身体的接触や結果の重大性など、裁判所が重視するポイントで慰謝料は変わる!

参本目! セカンドセクハラに遭わないために、あなたの会社は大丈夫?

 「セクハラ」で訴えると、加害者本人だけでなくそのような状況を放置している「会社の責任」が問われる場合もあります。

以下のチェックリストについて、あなたの会社はいくつあてはまりますか? 当てはまる項目が多いほど、あなたの会社は残念ながら、セクハラ対策に対する意識は低いと思っていいかもしれません。

□ 就業規則にセクハラに関する規定が一切ない

□ 就業規則や服務規定で、セクハラ行為者に対する懲戒規定(減給や解雇などの処分)がない。あるいはあなたはセクハラ懲戒規定があるかどうかを知らない

□ セクハラ相談窓口が設置されていない

□ セクハラ相談窓口の担当者が決まっていない

□ セクハラ相談をしても放置されている

□ 被害者と加害者が同席のもとで事情聴取が行われる

□ 被害者と加害者が同じ部署にもかかわらず配置転換するなど被害者への配慮がない

□ セクハラ事案が発生しても、再発防止策が講じられない

□ 相談内容が社内に筒抜け

□ 相談をしたセクハラ被害者側が不利益な扱い(解雇される等)を受けたことがある

せっかく勇気を出して、会社に相談したのに、会社の態勢が不十分だったがために、相談員や人事の言動でさらに傷ついたり、加害者から逆恨みされたりして被害が拡大してしまう、「セカンドセクハラ」ともいうべき被害に遭ってしまうことも残念ながらあるようです。

会社がどんな態勢を整えなければならないのかを事前に知っておき、おかしな対応を取られたら、あなたが傷つけられる前にノー!と言いましょう。

「リーガ~ルポイント」
加害者だけでなく、会社の責任も重大。セカンドセクハラに遭わないためにチェックを

西山温子(にしやま・あつこ)
弁護士。 第一東京弁護士会、インテグラル法律事務所所属。アラサーとアラフォーのハザマ世代の働き女子。剣道四段。取扱業務は、離婚、相続、労働をはじめとした一般民事事件ほか。一期一会を大切にクライアントの立場に寄り添った弁護活動がモットー。

【引用おわり】