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事例紹介

糸井重里さん、ブラック企業について語る

2014年3月25日

東洋経済オンラインからの記事です。(2013年6月)

http://toyokeizai.net/articles/-/14323

(引用はじめ)

世の中がおもしろくない、とは言うまい

――企業にいると、自分で仕事を作り出す人もいますが、ほとんどの人は仕事が上からふってきます。それをきちんとこなしていくことも大事ですよね。

そうですね。展覧会で紹介している「99の『はたらく人』のことば。」にもありますが、萩本欽一さんが、「したくない仕事しか来ない」と言ってるんです。あんなに視聴率をずーっと稼ぎまくってきたのに、「不本意な仕事しかなかった。全部と言っていいぐらい不本意な仕事だった」って。それをやりたい仕事に変えるんだって。不得意な司会を「やってみろ」と言われて、「エエッ、司会なんてできないよ」と。でも、そこから始まるんです。

――自分の向き不向きは、あんまり決めつけないほうがいい、ということですね。

向いてない人ばっかりなんじゃないですか(笑)。

――ああ。そこから自分で向くようにしていく。

そうですね。

――いま「仕事がつらくてしょうがない。やめたい」と思ってる人に対して、どういう言葉をかけますか。

「ほぼ日」にも書いたんですけど、「世の中がおもしろくない、とは言うまい。それはオレのせいだからだ」と。今日、おもしろくなかったのは、オレがそうしたからなんです。これは誰にでも当てはまるんじゃないかなあ。

この2年間、ぼくは東北の被災地の人たちと付き合ってきたけど、家族や知り合いが亡くなって、家も財産も流された人たちに、いまの言葉をぶつけられないですよね。あの不本意きわまりない、理不尽なところから立ち上がってきて、それでも笑顔でいる人間の強さを、ぼくは尊敬してるんです。

「はたらきたい展。」では、「東北の仕事論。」と「気仙沼のほぼ日。」の展示も

だから、「つらい」側しか見えていない人は、なにがカッコいいかを見つければいいと思う。文句ばっかり言っている人を「カッコいいなあ」と思ったらそうすればいいし、不本意な状況にあっても、それを自分で変えた人が「カッコいいなあ」と思ったら、そのまねをすればいいじゃない?

――もし自分のまわりにいなかったら、本や映画なんかで探してもいいかもしれませんね。

そうそう。「そういう人になりたい」と思ったら、やっぱり気持ちや行動も変わってきますよね。あんまりガリガリの精神論を言うつもりはないんですが、ただ、「ポジティブな側からも見てごらん」とは言いたい。今の自分の環境なんて、よくないに決まってる。ぼくだってそうです。

――糸井さんが「つらい」と感じられるときは、どういうときですか。

糸井重里(いとい・しげさと)

東京糸井重里事務所社長
1948年生まれ。 コピーライター、エッセイスト、タレントなどとしてマルチな才能を発揮してきた。98年ウェブメディアの、「ほぼ日刊イトイ新聞」を開設。東京糸井重里事務所は、売上高28億円、純利益3億円の優良企業。著書に「はたらきたい。 」などがある。

うまくいかないとき。でも、だんだんとそれは減ってきています。あんまり当てにしなくなったから、いろんなことを。

――当てにしない?

一足飛びに期待すると、つらいことが多くなるんです。ちょびっとだけ期待するのがコツ。ハードルを上げすぎても飛べっこありませんから。高すぎず、低すぎず、的確に上げられるのがいちばんいいでしょうね。

――それは自分に対しても、他人に対しても、両方ということですか。

そうです。人には優しいけれども、自分に厳しい人って案外、いっぱいいるんですよね。でも、それはダメですね。

だから、ぼくもラクをするし、つらいところは「つらい」と言いながらやる。そういうときはハードルを低めに設定します。そして、だんだん力がたまってきたら、ピョーン!と飛びたくなるから、そのときに楽しく飛べばいいんです。

ブラック企業と「楽しさ」

――最近、ブラック企業が話題になっていますが、「楽しさ」という要素がまったく出てきません。

ブラック企業って、あれ、なんなんでしょう。その言葉、すごい流行りましたよねえ。

――異様に流行ってますね。

デザイン事務所は全部ブラック企業ですよ。ブラックを超えているんじゃないかなあ(笑)。

ある程度、徒弟的な会社って、みんなそうですよね。でも、ぼくは会社を始めるときに、それをやりたくなかったから、そうじゃないようにしたんです。

たぶんなんですけど、ブラックになるのは、やっぱり稼ぎ方がまだ見えてないからですね。デザイン事務所がちゃんとどうやって稼ぐかをわかって、仕事の配分を上手にしていけば、あんなにブラックにする必要はないのかもしれない。

ブラック企業って、実際になかを見てみないとわからないですけど、大変だろうなあって思いますね。社長もそこで働く人も、両方が気の毒。

――楽しく働くためには、やっぱり商売をちゃんと回すことが大事、と。

ええ。社長の責任は重いですよ。

――お金を稼げてこそ、楽しさも生まれてくる。

でも、稼いでいるのに、どんどんブラックにしていく会社ってのもあるかもしれないですからねえ。

――ああ(笑)。

まぁ、言えないけど(笑)。

――株主のプレッシャーとかもあって。

それはちょっとおかしいですよね。「楽しい企業の株を買いたい」っていう株主がいたらいいのに。

――たしかに。「楽しい企業ランキング」があったほうがいいですね。

だって、株を買うことは、「その会社の一員ですよ」っていうメッセージのようなものじゃないですか。だとしたら、「オレは人を苦しめている会社の株を持ってるんだ」って言いたくないですよね。

――そうですね。

そういう時代になったらうれしいですねえ。だから、働き方を考えるということは、そういうことまで含んでいる。

それがうまくいっている例を見せないといけない。いまのうちからマッサージしておいて、やわらかい筋肉で次の時代を迎えたいなあ。

おカネ儲けと「楽しさ」

――「ほぼ日」は非常にうまくいっている例ですよね。手帳がいまや47万部も売れて、土鍋やハラマキ、書籍などの物販でしっかり稼いでいます。糸井さんは、稼ぐことやおカネに関して、どういうスタンスを持っていますか。

「お客さんがおカネを払いたくてしょうがないものを作ればいい」って考えてます。だから、稼げないというのは、何かが相手にとって魅力がないんだと思います。「どうして売れないんだろう?」じゃなくて、売れないものを作ってるからだって。

「ほぼ日」では、土鍋からはらまきまで、さまざまな商品を売っている

ぼくらは、たとえば本を出すにしても、毎月、何冊も出さなくていいんです。出版社は何冊か出さなきゃならない義務というか、ノルマがありますが、ぼくらは売れそうだなと思ったら出せばいい。あるいは、出す必要があれば出せばいい。そうしたらラクですよね。

――「おカネを稼ごう」じゃなくて、楽しさやおもしろさを追求していたら、自然とおカネがついてくる。

まぁ、そうすると「それ、つまんないよ」っていう、いちばんキツい一言を覚悟しなきゃいけないですけど(笑)。喜ばれないものはつくってもしょうがないから、出せないです。稼ぐのは投票結果だと思ってます。

――「ほぼ日」の商品は、価格設定も世間の相場より高めな印象があります。それはつくっている人に対して、報いたいといった思いがあるのでしょうか。

ぼくらはつくっている人に、「もっといっぱい注文するから、安くしろ」みたいなことをあんまり言わないんです。だから、たくさん売れたら、工場の人も儲かります。

本当はそういうビジネスをどんな企業もやりたかったはずなんですよ。でも、ちょっと油断すると、「もっとまけろ」みたいなやり方に走りますよね。そうなると、たとえば下請けをしている人たちを仲間だと思えなくなっちゃうんです。だんだん敵に見えてくる。

ものを買う人が、「もっと安ければ買うのに」っていうときって、たとえ安くても買わないですよ。それは自分のことを考えてみれば、よくわかるけれども。

「こっちのほうが5円、安いから買う」という場合、それは単なるゲーム感覚ですよね。その5円って、もし道に落ちてても、拾わないかもしれない5円でしょう。

ぼくらは、本当にほしいモノを、人を困らせるんじゃない値段で買いたいという人と付き合いたいんです。「ほしくない」って思われたら、「そっかあ、ほしくないのかあ。ザンネン!」ってあきらめる(笑)。

――大企業ばっかりよりも、「ほぼ日」みたいな会社がいっぱいあるほうが、社会は幸せそうな感じがしますね。

どうですかね。これも一つの形です。

――楽しそうな働き方が、これから大企業ではあんまりできなさそうな気がするんです。

小さい場所は楽しいんです。名前を呼び合う関係じゃなくなったら、大変になるんです。

――糸井さんは社長として、「ほぼ日」の方々が楽しく働けるように、なにか工夫されていますか。

飽きないように考えてますね、いつも。飽きるのが一番つまんないんです。一緒に何か食べに行くのでもいいし、席替えみたいなこともします。イベント的なこともしょっちゅうやってます。そういうのは、ぼくが企画したほうがいいですから。

――日常とは違うお祭りのような体験をどんどんしかけていくんですね。

今回のような展覧会も、気分転換にもなるし、自分たちの思ってもみない才能が見つかったりすることも、よくありますから。

――楽しく働くことが、いい方向につながっていくんですね。

いろいろ大変なことも多いですけど。

――つらい時は「楽しめ」と言い聞かせて。

そう。永吉じゃなくても(笑)。

――ハードルは低めに設定して。

力がたまってきて高く飛べたら、「思い出しました!!」となる(笑)。

――ありがとうございました。

(構成:上田真緒、撮影:今井康一)

(引用終わり)