パワハラ防止を通して職場環境の改善を創造する職場環境改善工房

お問い合わせは090-7312-3133

事例紹介

マタハラなくすには 意識改革・人事制度…3氏の論

2015年2月10日

2014年10月18日 朝日新聞の記事です。

http://digital.asahi.com/articles/ASGBG6KP8GBGUPQJ007.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGBG6KP8GBGUPQJ007

 

【引用はじめ】

妊娠や出産を理由にした解雇などマタニティー・ハラスメント(マタハラ)が絶えない。この問題で最高裁が近く初の判断を示すのを前に、職場の実情や働き方の課題を考える。

■妊娠を祝福される職場に 小林美希さん(ジャーナリスト)

この30年、様々な調査で女性の6~7割が第1子出産を機に無職になるという傾向は全く変わっていません。女性が妊娠・出産のため仕事を辞めざるをえない状況は長く続いています。

その状況が、マタハラという言葉によって、ようやく社会問題として認識されるようになったのは、昨年5月、連合がマタハラの調査を発表したことが大きかったでしょう。安倍政権が「女性が輝く社会」を提唱し、女性の雇用に注目が集まる一方で、聞こえはいいけれど現実は違うと、埋もれてきた多くの声が上がり始めました。

妊娠などを理由にした解雇や降格などの不利益な取り扱いは男女雇用機会均等法で禁じられているにもかかわらず、私が取材した中にも、上司に妊娠を報告すると当然のように「仕事辞めるんでしょ」と言われたり、「働き続けて流産してもいいの? 会社は責任もてないよ」などと事実上退職を迫られたりした女性は少なくありません。

そうした「妊娠解雇」を避けるため、妊娠を上司に報告せずに我慢して長時間労働や夜間労働などをしたため、過重に負担がかかり、流産する女性も後を絶ちません。これを私は「職場流産」と呼んでいます。

私の実感では、「妊娠解雇」や「職場流産」はこの数年増えていると思います。リーマン・ショックの後、人件費が削減されてぎりぎりの人員の中で仕事をしている職場では、正規、非正規を問わず、長時間労働などの形で労働者にしわ寄せが来ています。そんな中、妊娠した同僚への視線はますますとげとげしくなっています。

結局はマタハラを防ぐために最も必要なのは経営者の意識の改革です。せっかくスキルを磨いた優秀な女性が妊娠により労働市場から退場させられる一方で、男性というだけで淘汰(とうた)されずに残っている社員ばかりで強い企業になるでしょうか。

ある大手人材派遣会社では、子育て中の女性ばかりの営業チームを作ったところ、仕事の共有化や職場の助け合いが起きて、他の部署より早く帰っているにもかかわらず、社内平均の約2倍の営業成績を上げたという実例もあります。彼女たちを退職させていたら、大きな損失になっていたはずです。

私の試算では、染色体異常が原因でない流産、つまり妊娠中の環境がよければ流産せずにすんだ子どもは毎年2万人以上います。このかなりの部分は「職場流産」だと思います。

多くの働く女性は今でも、職場の上司に「すいませんが妊娠しました」と謝っている状況です。自ら望んだ妊娠でも、仕事を続けられるか、職場に迷惑をかけないかといった不安が先立つからです。妊娠を堂々と報告でき、同僚から祝福される会社でなければ将来はありません。

(聞き手・山口栄二)

75年生まれ。株式新聞社記者、「週刊エコノミスト」誌記者を経て、07年からフリーに。著書に「ルポ 職場流産」「ルポ 産ませない社会」など。

■男性も働き方を変えよう 小室淑恵さん(ワーク・ライフバランス社長)

約900社の企業をコンサルティングしてきて、経営者や人事担当者とお話しして感じるのは、今まで管理職にとって育成するに値する人材というのは、いつでも残業、出張、転勤ができる人間だと思い込んでいる人が多かったということです。彼らは、女性が妊娠・出産から復帰した後、能力が伸び悩む傾向があると考えがちです。しかし、それは仕事のやり方に問題があるのです。例えば重要な意思決定をする会議が当然のように時間外に開かれる。その会議に出られない人間は育成の対象ではないというわけです。

よく、「時間に制約のあるヤツは使えない」と公言する男性管理職もいますが、現在では時間の制約は女性特有のキャリアの問題とばかりは言えなくなっています。親の介護の問題です。一人っ子、独身の男性にとって、親の介護の問題を抱えた途端、自分自身が「時間の制約のあるヤツ」になってしまうのです。親の介護はすべての人が直面する問題です。労働人口が減っていく日本社会の中で、企業は、所定時間内で成果を出していけるような社員の働き方の仕組みを戦略的に考えなければ生き残れなくなるでしょう。

安倍晋三首相が提唱する「女性が輝く社会」というのは、実は男性にとっても働き方が変わる社会でなければならないと思います。残業地獄の中で、無制限に働いて疲弊している男性たちにとっても、子どもと接することもできない、親の介護もできない、そんな働き方を変える契機にしなければなりません。

私は起業の準備のため勤めていた資生堂に辞表を出した翌日に妊娠がわかり、翌年長男を出産した3週間後に会社を立ち上げました。毎日午後6時15分に子どもを保育園にお迎えに行くため、まだ仕事をしている社員を残して社を出ると、肩身が狭くなって仕事への意欲も落ちることを知りました。これを皆がこれから体験するのだと気づき、全員残業禁止というルールを作りました。みんなが時間内に成果を出そうと努力した結果、創業以来ずっと増収増益です。トップの成績を上げているコンサルタントは、なんと短時間勤務の女性です。働く時間の長さと成果は関係ないのです。

このように企業が「期間当たりの成果」で人を評価して時間無制限で競わせるのではなく、「時間当たりの成果」で人を評価するようにルール設定を変えれば、女性も男性ももっと輝いて仕事ができるはずです。

マタハラの問題は、女性だけの小さい問題と捉えず、企業の人材育成、人材評価全体を見直すきっかけとする必要があります。景気が上向いて、人材の奪い合いが始まっている今、企業の側も意識が変わらなければ、事業継続に必要な人材を確保できなくなるでしょう。

(聞き手・山口栄二)

75年生まれ。資生堂勤務を経て、06年に起業。9月から政府の産業競争力会議の民間議員。著書に「6時に帰るチーム術」など。2児の母でもある。

■出産時期、自由な職場に 白河桃子さん(少子化ジャーナリスト、相模女子大客員教授)

最近、人材育成について企業にアドバイスを行う会社などは、女性社員の育成期間を5年ほどに短縮し、早く一人前になってもらって出産や育児に備える「早期育成」を助言する傾向が強くなっています。大学で私が行ったヒアリングでも、出産後も働きたいと考えるキャリア志向の女子学生のほぼ半数が「早く結婚し、早めに出産したい」と答えました。仕事に意欲的な学生を確保するには、育成期間の短縮が効果的だと考えているのでしょう。

しかし、妊娠はキャリア形成のようにコントロールできません。例えば「34歳までバリバリ仕事をして35歳で子供を産みます」などというプランも、「希少の機会」である妊娠だけは計画通りにはいかないもの。

育成期間中に妊娠すれば、キャリア形成から外されてしまう状況は変わっていません。今までは女性が妊娠を仕事に合わせてきましたが、逆にいつ出産しても仕事に支障がない仕組みが必要です。本当に女性が活躍できる社会にするには、年齢と仕事を関連づけない人事制度が欠かせない。私自身、外資系での経験から「この年齢でないとできない仕事」という関連づけは意味がないと思います。出産・育児を終えた「30歳の新人」が出てきてもいいはずなのです。

日本では新卒一括採用の影響で一律にキャリアを積み重ねることが不文律のため、出産や育児の空白が大きな壁になってしまう。多くの企業に「何よりも仕事が優先されるべきだ」という空気が流れています。個人の人生よりも会社の都合を優先させる空気が「マタハラ」を生み出す温床です。

産業構造の変化で、専業主婦を支えられる収入のある男性は減ってきています。比較的賃金が高い製造業は縮小し、パート従業員が多く賃金が低めの医療・福祉の仕事が拡大しています。こうした変化に伴って結婚の価値観も変化せざるをえません。男性に養ってもらおうと考えれば考えるほど、婚期が遅れてしまうのが実態です。

専業主婦になって早く子供を産みたい」という女子学生には「早く結婚したければ、しっかり仕事をして自分でお金を稼ぐ『自活女子』を目指しなさい」とアドバイスしています。経済面で男性に依存したいと考えている女性ほど結婚が遅くなる、またはできないのです。

共働きと子育てが両立できる社会に脱皮しなければ、少子化を乗り越えられません。そのためには「働きたい」女性がくじけないことはもちろん、「働きたくない」と思っている女性にも、働く意欲を呼び覚まさせる環境を社会と企業が整える必要があります。「少子化だから子供を産もう」というかけ声だけでは何も変わらないのです。

(聞き手・古屋聡一)

61年生まれ。大手商社や外資系投資銀行などに勤務後、少子化問題を扱うジャーナリストに。共著に「女子と就活」「『産む』と『働く』の教科書」など。

【引用おわり】

 

マタハラについて、もっと知りたい方は、以下をそれぞれクリックしてください。

 

【こんにちは!あかちゃん 第23部】 これってマタハラ?<1>「妊娠諦めろ」と言われ

 

【こんにちは!あかちゃん 第23部】これってマタハラ?<2>夜勤、時間外 妊婦でも

 

【こんにちは!あかちゃん 第23部】これってマタハラ?<3>再就職のハードル高く

 

【こんにちは!あかちゃん 第23部】これってマタハラ?<4>問われる経営者の意識