パワハラ防止を通して職場環境の改善を創造する職場環境改善工房

お問い合わせは090-7312-3133

事例紹介

パワハラ訴訟で発覚、勝訴企業の不都合な「工作」

2015年1月21日

2015年1月21日 日本経済新聞 の記事です。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO81361690W4A221C1000000/

 

 

パワハラ訴訟の中には、損害賠償がみとめられなくても

企業側の不都合な「違法性」のある行為が認定されることがあります。

その点について記した貴重な記事として、ここに皆様に紹介します。

 

【引用はじめ】

裁判記録をとじた厚いファイルを開き、埋もれた事案に目を向けてみれば、当事者たちの人生や複雑な現代社会の断片が浮かび上がってくる。裁判担当記者の心のアンテナに触れた無名の物語を伝える。

上司のパワハラで休職に追い込まれたとして、大手上場企業でインターネット関係の仕事をしていた元社員が訴えを起こした。一審判決は請求の大半を退け、二審判決は「パワハラはなかった」と全面的に否定した。しかし、完勝した会社側も素直には喜べなかったに違いない。判決文に目を通してみると、そこには会社にとって不都合な事実が記載されていた。

訴訟を起こした元社員は、別の会社で専門職として経験を積んだ後、中途入社。管理職としていくつかの部署で部長や副部長を務めていた。しかし、その後、突発性難聴や頭痛、吐き気などを理由に休職。休職期間が満了した約1年半後、退職した。

元社員は「休職は上司のパワハラによって鬱病に追い込まれたため」と主張。退職の無効確認のほか、慰謝料500万円や未払いの給料などを請求した。上司の指示に従うのを拒んだところ罵倒され、やがて退職の強要や、管理職から一般職への降格処分を受けるようになったと主張した。

一審・東京地裁の判決は、上司が元社員に対する説教の中でわいせつな単語を用いた部分についてのみ「人格をおとしめる発言だったことを否定できない」として違法と認定した。それ以外の元社員の主張は「証拠がない」と退けた。未払い給料の請求は認めず、会社側に支払いを命じたのは慰謝料2万2千円にとどまった。

■ノルマ達成装う会社の指示、判決文中で言及

ところが、その判決文の中には、元社員が拒否したという広告がらみの2つの「工作」について、裁判所の意見が記されていた。

1つはクレジットカードの入会を求めるメールマガジン広告を巡るもの。元社員の主張では、会社は広告主に約束した30件という新規加入数のノルマをクリアするため、「いったんカードに加入し、年会費が発生する前に解約すること」を社員に推奨していたという。もし本当なら、会社はノルマ達成を装っただけでなく、“偽装加入”1件あたり数千円の成果報酬も広告主から得ていたことになる。

元社員側は証拠として、会社が社員に協力を求めたメールの内容を提出した。社員同士が「勤務先が同じなのに一気に申し込んでいいのか」「入会手続きは夜帰宅してからのほうが自然に見えて望ましい」などとやりとりしたメールも残されていた。

地裁は会社が解約を推奨したことまでは認めなかったが「入会への協力を社員に求めた」と認定し、「なお、こうした対応が広告を依頼したカード会社との契約の本旨に沿うものかについては疑念は残る」と付け加えた。「なお書き」と呼ばれる傍論部分で、わざわざそう指摘した判決文の行間には、反旗を翻した元社員への一定の理解がにじんでいるようにも受け取れる。

もう1つは、インターネットを使った広告誘導数の組織的な水増しだ。広告主との契約で取り決めていたリンク先へのアクセス数が目標に達しない見通しとなったため、社員にアクセス数を増やすための協力を求め、各社員にクリック数を割り振っていた。

こちらについても、会社が「職場からのアクセスとわからないように自宅のパソコンからアクセスするように」と要請した記録が社員のメールに残っていた。地裁はやはり「なお書き」で「契約の本旨に沿うものかについては疑念はある」と指摘した。

■高裁で会社側完勝も、「工作認定」は覆らず

地裁は2つの「工作」が存在し、元社員が拒否したことまでは事実として認定したが、「それによって嫌がらせがなされたとは認められない」と判断した。元社員だけでなく、会社側も控訴し、審理は高裁に移った。

東京高裁は判決で、地裁がパワハラを唯一認めた上司の問題発言について「人格的利益を違法に侵害するとまではいえない」と判断。「パワハラはなかった」として2万2千円の賠償命令も取り消し、会社側の全面勝訴とした。

高裁の判決文を見ると、判断の変更に伴って地裁の判決文の何カ所かに修正の手が入れられている。ただ、地裁が会社側の「工作」に疑念を示した部分はそのまま残った。

(社会部 山田薫)

【引用終わり】