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事例紹介

密室はいかに裁かれるか(2)~セクハラ巡り真っ向から対立

2015年1月9日

2015年1月6日 読売新聞の記事です。

http://www.yomiuri.co.jp/job/navi/kaneko/20150105-OYT8T50051.html?from=yartcl_blist

【引用はじめ】

2人だけしかいない密室ということであれば、2人の証言がもとになって事実の判断がされることはもちろんですが、その密室状態の以前と以後から2人の間に起きたことをいろいろと判断(推測)するという手段もあります。

 密室以前というのは、被害者は明らかに誘いを嫌がっていたとか、そうした苦情を友人に漏らしていたなどの、前兆に対する対応です。以後というのは、密室で起きたことが深刻であればあるほど、その後の被害者の言動に大きな変化がみられるということです。

 具体的には「A(被害者)は、本件当日以降、それまでの表面的態度を一変させて被控訴人(行為者)を避けるようになったところ、これは、被控訴人からセクシュアル・ハラスメント行為を受けたためであると考えられ、同行為があったことの証左というべきである。(Aの態度が急変したことを理由づけ得る他の事情はみいだせない)」(「P大学セクハラ事件」大阪高裁H24.2.28判決)などと判断されます。

証言の信ぴょう性

 それでは、両当事者の言い分はどのようにジャッジされるのでしょうか。おおむね真っ向から対立する言い分となる訳で、証人や証拠もないことですから、こうした場合の判断も困難を極めます。

 P大学の事件では、こんな場合の証言の信ぴょう性については「Aの証言は、具体的かつ詳細で、迫真性もあるうえ、終始一貫しており、その内容などに特段不自然・不合理な点はない。そして、Aが虚偽のセクシュアル・ハラスメントを作出して被控訴人を陥れようとする動機は何ら想定することができない。むしろAは、本件大学に着任して間もない准教授の立場にあり、本件大学においてキャリアを積み重ねていこうとしていたものであるから、大学部内においてセクシュアル・ハラスメントの被害を訴えることが自己のキャリア形成などにマイナスとなるのではないかと考えて、救済申し立てにいたるまでに相当逡巡(しゅんじゅん)した様子が認められることからしても、Aにおいて、自己に不利益が及ぶ危険性をかえりみず、あえて虚偽のセクシュアル・ハラスメント被害を作出したものとは到底考えられない」としています。

 つまり、このケースでは<1>証言の一貫性<2>具体的信ぴょう性<3>あえて不利益を訴える意図の有無、などから判断しています。

2人の力関係

 セクハラには「相手の意に反した性的な言動」という、いわゆる力関係で相手に有無を言わせずに自分の意思に従わせるという重要な要素があります。これも、密室以前の2人の力関係が密室内でどのように相手に及ぼしていたかということは、ある程度外部からも判断できます。

 往々にして、力や立場にある行為者はこうした自らの権力行使という点には鈍感で、「そんなつもりはなかったし、相手も対等な立場で(好意をもって)接していた」という勘違いも含めた受け止め方が出てきがちです。

被害者は喜んでいたか?

 このP大学事件でも、行為者が
<1>飲酒の誘いに喜んで応じた。<2>身体に触ったとするお酒の席でも嫌がって途中で退席することもなかった。<3>帰宅の際にも歓談しながら帰った。<4>別れ際に握手を求めてきた。<5>別れた電車から感謝のメールを受け取った。
などとし、「決して無理強いしたものではないし、むしろ彼女も好意的だった」と繰り返し主張しています。

 こうした主張を真剣に訴える行為者を現場で何度も見てきましたが、彼らがとらわれている考え方の柱には「明確な拒否をされれば理解できるが、そうした対応はなく、むしろ受け入れていたはず」というものです。「NOがなかったから受け入れていたはず」であり、場合によっては「嫌よ嫌よもいいのうち」に近い信念をもっている人も現れます。

 そんな人の立場に立てば、被害者の豹変(ひょうへん)(に見える訴え)は理解できないし、何か背景に悪意があるのではないかとまで邪推しかねません(いわゆるハニートラップだというわけです)。

 さて、次回以降はそんな密室をめぐるバトルを見ていくことにしましょう。

【引用終わり】

このHPでは、セクハラについての事例、記事を多く載せています。以下の記事も参考にしていただければと思います。(それぞれクリック)

企業がとるべきセクハラ対策を考える(前編)

企業がとるべきセクハラ対策を考える(後編)

■セクハラか否か 裁判官を悩ませた8000通のメール