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事例紹介

パワハラの予防及び、パワハラの対応について書かれた新聞記事

2014年9月7日

1年以上前の記事であっても、現在に通じる記事というのもたくさんあります。

以下の記事は、現時点でのパワハラに関する議論の基本を忠実に捉えた記事だと思いますので、ご紹介します。

 

2013年5月 読売新聞の記事からです。

http://www.yomiuri.co.jp/otona/life/law/20130501-OYT8T00963.htm

(引用はじめ)

「会社にとって私は取り換えのきく部品、もしくは虫けらでしょう。でも、一寸の虫にも五分の魂です。この恨みが忘れられません。アイツだけは絶対に許せないのです」

その手紙には、パワーハラスメント(パワハラ )を受けたという40代の女性社員の生々しい告発の声と、告発に至るまでの経緯が事細かに記されていました。彼女の上司は「アイツ」呼ばわりです。

告発者の激しい怒りがにじみ出る手紙を読んで、人事部長の私は、頭を抱えました。この問題の背景にあるのは、2009年のリーマンショック後に進めてきた社内のリストラです。即席飲料を製造販売している当社では、健康飲料ブームにのり、十数年前から青汁の売り上げが急激に伸び始めました。社員を増やし、組織を急拡大したのですが、同業他社とのシェア争いで劣勢になったところでリーマンショックの直撃を受けたのでした。

彼女は、長年、本社の購買運輸部包装資材課に所属し、主に伝票の入力を担当していました。ミスのない完璧な仕事ぶりだったのですが、リストラに伴う業務の見直しで、北関東の出張所にやむなく異動してもらうことにし、配転の打診を行いました。

ところが、上司から打診を受けた時に、シングルマザーの彼女は、「幼稚園と小学校低学年の子ども2人の面倒を実家の母親にみてもらっているため、配転には応じられない」と主張し、異動を断ったのでした。

告発によると、それから約1年間、上司から一切新しい仕事を与えられず、同僚と仕事上の話をするのを禁止され、毎朝挨拶しても無視されたそうです。また、「女には無理」「役立たず」などと大声でどなられ、休憩時間に休憩をしていると、「やることが遅いし、手順が悪いのだから休憩なんかしないで、さっさと仕事をしろ」と言われたりしたというのです。彼女は、「これらはパワーハラスメントに該当し、会社には、私が被った精神的な損害などへの賠償責任があります」と主張しています。

パワーハラスメントについて最近よく聞きます。私は人事部長でありながら、恥ずかしいことに、基本的なことを知りません。パワハラ とは、具体的にどのようなもので、会社が責任を負う場合があるのか――といったことを教えてください。また、今回のケースで、会社に責任が生じるということであれば、単なる社員間のトラブルということで済ますことはできず、今後、会社としてパワーハラスメントを予防していく必要があります。具体的にどのような対応が求められるのかについても、教えていただけないでしょうか。(最近の事例を参考に創作したフィクションです)

近ごろ、注目を集めるパワハラ…ネットで炎上も

ご相談の事案のように、「自分にだけ仕事が与えられない」「同僚との会話を禁止される」「毎朝、挨拶しても無視される」「他の社員がいる前で、大声でどなられる」など、職場における「いじめ」や「嫌がらせ」といった職場のパワーハラスメント、いわゆるパワハラの問題が、近ごろ、社会的な注目を集めています。

以前はそれほど一般的に使われる言葉ではなかったですが、今や様々な場面で頻繁に使われるようになり、最近も、あるアニメにおける偽の声優オーディションを巡り、ネット上でパワハラ批判が起こり炎上しました(興味がある方は、「パワハラ」「炎上」のキーワードで検索すれば関連記事が上位を占めていますのでご参照下さい)。

都道府県労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は、平成14年度には約6600件であったものが、平成22年度には約3万9400件と5倍以上に増えています。また、民事上の個別労働紛争相談件数の中で「いじめ・嫌がらせ」に関するものは平成14年度には第4位でしたが、平成22年度には第2位となっています。さらに、東証一部上場企業を対象に行われた「パワーハラスメントの実態に関する調査研究」(平成17年中央労働災害防止協会)では、43%の企業が、パワハラあるいはこれに類似した問題が発生したことがあると回答し、82%の企業が、パワハラ対策は経営上の重要な課題であると回答しています。

このように、社会的な問題として顕在化してきたこともあり、厚生労働省の審議官なども参加する、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議では、平成24年3月15日、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」を公表しました。また、この提言に先立つ平成24年1月には、上記円卓会議のワーキング・グループが、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」を公表するなど、国もパワハラ 対策に積極的に乗り出しています。
パワハラとは何か

パワハラ は、法令上明確に定義されているものではなく、必ずしも一義的に捉えられません。例えば、前述の円卓会議ワーキング・グループ報告では、職場のパワハラは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義されています。

また、法務省関連の資料では、「職場内での地位や権限を利用したいじめ」を指し、「職権などの優位にある権限を背景に、本来の業務範囲を超え、継続的に、相手の人格と尊厳を侵害する言動を行い、就労環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること」とされています。

ちなみに、この連載の「営業課長が新入社員にセクハラ どうすればいい?」でもご説明しましたように、セクハラが、「セクシュアルハラスメント」(sexual harassment)という英語の略語であるのに対し、「パワーハラスメント(パワハラ)」は和製英語です。欧米では、職場のいじめとして「mobbing」「bullying」「moral harassment」といった語が用いられています。辞書によると「mob」の意味は「群れをなして襲う、寄り集まって喊声(かんせい)を浴びせる」とあり、また「bully」の意味は「いじめる、脅す、威張り散らす」とあり、この英語の直訳の内容が、パワハラ のイメージをつかみやすいかもしれません。
パワハラの具体例

では、パワハラの具体例としてはどのようなものがあるでしょうか。前述の報告書では、職場のパワハラの典型的な行為類型として次のようなものを挙げています。

(1)暴行・傷害(身体的な攻撃) (2)脅迫・名誉毀損(きそん)・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃) (3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し) (4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求) (5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求) (6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

なお、報告書では、上記の類型のうち、(1)については、業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできないとしています。いずれも、場合によっては刑事事件に発展するような行為であり、当然のことと思います。

それに対して、(2)(3)については、業務の遂行に必要な行為であることは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものと考えられるとされています。報告書も例外の存在を認めているわけです。さらに、微妙なのが(4)から(6)までです。報告書も、(4)から(6)については、業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合がある旨を指摘しています。こうした行為については、何が「業務の適正な範囲を超えるか」については、業種や企業文化の影響を受け、また、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分もあると考えられるからです。

職場においては、会社業務を円滑に進めるために、管理職に一定の権限が与えられており、場合によっては、部下に対し指導や叱責が行わることがあります。例えば、取引先との約束時間を間違えて遅刻してきた時、同行した上司がつい「何やってるんだ!」とどなってしまったとしても、それだけでパワハラと評価することは難しいでしょう。

この上司の行動は、「業務の適正な範囲」に含まれる部下への指導であると考え得るからです。しかし、この言葉に加えて、「お前の将来はないものと思え」「だから、お前とは仕事したくないんだ」「親の顔が見てみたい」「ウワサ通りの役立たずだな」「仕事しなくていいから、帰って寝てろ」などと言ったり、さらにそれが日常的に繰り返されるとパワハラとなってきます。

つまり、部下への業務指導の一環としての「叱責」は許容されても、その叱責に加えて「嫌がらせ(ハラスメント)」の要素が加わってくると、パワハラ に転化するわけであり、この点が難しいところです。

なお、ここでは上司と部下の例を挙げていますが、パワハラ は、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間などの様々な「優位性」を背景に行われるものも含まれるとしています。世間では、パワハラ というと、上司から部下に行われるものと思われがちですが、必ずしもそういうわけではありません。

ワハラの問題に取り組む意義

企業にとって、パワハラの問題に取り組む意義は、企業の損失を防ぐということにもあります。パワハラを受けた人にとっては、人格を傷つけられ、仕事への意欲や自信を失い、心の健康の悪化、休職や退職に至る場合があり、周囲の人にとっても、パワハラを見聞きすることで、仕事への意欲低下、職場全体の生産性への悪影響を及ぼしかねません。

また、企業にとっては、単に従業員間の問題にとどまらず、組織の生産性への悪影響や貴重な人材の休職・退職という損失、さらには、パワハラに企業として加担しなくとも、放置するだけで企業のイメージダウンにもつながりかねません。このように、企業にとってもパワハラの問題に取り組む意義は大きいと言えるのです。

なお、平成17年に東証一部上場企業を対象とした「パワハラは企業にどんな損失をもたらすか」というアンケート調査では、「心の健康を害する」「職場の風土を悪くする」「周りの士気が低下する」「生産性が低下」「十分に能力が発揮できない」「優秀な人材が流出」などといった回答が上位を占めています。
裁判に発展した事例

上記のように、パワハラは、それを放置した企業に対して徐々に目に見えない損失をもたらしますが、場合によっては、損害賠償請求といった裁判にまで発展することがあります。

ご相談者の会社内部で発生したケースと類似した事案で、裁判所は、会社に対し、慰謝料60万円の賠償責任を認めました(ネスレ事件、神戸地方裁判所平成6年11月4日判決)。この事件は、被告会社が、原告となった従業員に対して行った配転の打診が拒否されて以来、約1年にわたり、当該従業員に仕事をさせず、同僚に仕事の話しかけをさせなかったり、当該従業員に対し、「会社のノートを使うな」「トイレ以外はうろうろするな」など、繰り返し嫌みをいい、電話の取り次ぎにも口をはさみ、最後には電話を取り外してしまうなど、職場でのいじめ・嫌がらせが問題になったもので、裁判所は、当該従業員の上司等を通じてなされた会社の上記行為は加害の意図をもってされたものであると認めました。

また、名古屋地方裁判所平成16年7月30日判決は、会社に勤務する従業員が、先輩従業員から継続的に暴言、暴行を受け受傷した事故につき、会社及び先輩従業員に対する損害賠償請求を認めた事例(先輩従業員らに対し103万円余り、会社に対して129万円余りを認定)ですが、裁判所は次のような暴言があった事実を認めています。

「原告が膝を痛め…被告Aを欠勤し、翌20日出勤すると、朝の朝礼においてCから、『仕事の遅い人が来ました。昨日は早く終わったのに。』という発言が従業員全員の前であり、原告は屈辱的思いを味わった。その後も、Cから、原告に対し、『お前は馬鹿か、馬鹿は馬鹿なりの仕事をしろ。』とか、休憩時間に休憩を取っていると、『やることが遅いし、手順が悪いのだから、休憩なんかしていないで、さっさと仕事をしろ。』などの暴言が浴びせられた。そして、平成14年10月30日の朝礼では、Cから、『不景気のためリストラもある。』旨の話があり、そのころから、被告Bは、原告のことを『おい、リストラ。』と呼ぶようになった。」 ※被告A=勤務先の会社
地方自治体の責任が認められた事例も

横浜地方裁判所平成14年6月27日判決は、職場でのいじめによる自殺について自治体の責任を認めたものです。

川崎市の水道局工事用水課に勤務するAが、同課課長Bら上司3名が行った職場内でのいじめ、嫌がらせなどで精神的に追い詰められて自殺したとして、Aの両親(原告)がBらと川崎市に対して損害賠償を請求したものですが、川崎市について、いわゆる安全配慮義務違反を理由に国家賠償責任が肯定されています。判決は次のように判示しています。

「一般的に、市は市職員の管理者的立場に立ち、そのような地位にあるものとして、職務行為から生じる一切の危険から職員を保護すべき責務を負うものというべきである。そして、職員の安全の確保のためには、職務行為それ自体についてのみならず、これと関連して、ほかの職員からもたらされる生命、身体等に対する危険についても、市は、具体的状況下で、加害行為を防止するとともに、生命、身体等への危険から被害職員の安全を確保して被害発生を防止し、職場における事故を防止すべき注意義務(以下「安全配慮義務」という)があると解される。また、国家賠償法1条1項にいわゆる「公権力の行使」とは、国又は公共団体の行う権力作用に限らず、純然たる私経済作用及び公の営造物の設置管理作用を除いた非権力作用をも含むものと解するのが相当であるから、被告川崎市の公務員が故意又は過失によって安全配慮保持義務に違背し、その結果、職員に損害を加えたときは、同法1条1項の規定に基づき、被告川崎市は、その損害を賠償すべき責任がある。」
告発者と誠意を持って話し合い和解を

今回のご相談者のケースは、告発者の主張が全て事実であれば、パワーハラスメントの典型的な行為類型であると考えられます。したがって、会社としては、今後、裁判に発展した場合おいて、損害賠償責任を負う可能性が十分あると思われます。

ご相談者としては、きちんと事実関係を調査したうえで、その調査結果を踏まえ、告発者と十分話し合い、また当該上司に対する人事上の措置等、社内規定に基づいて適切に対応する必要があると思われます。

また、ご相談者も述べるように、今後二度とこのような事件が発生しないように、対策を考えておくべきです。
パワハラの予防策

では、パワハラを予防するためには、具体的に、会社として、どのようなことをすればよいのでしょうか。先に紹介した円卓会議ワーキング・グループ報告では、以下のようなことを指摘していますので、これを参考に、会社としての取り組み、対策を検討されるとよろしいかと思います。

(1)「トップのメッセージ」…組織のトップが、職場のパワハラは職場からなくすべきであることを明確に示すことが求められます。また、トップのメッセージを示すにあたっては、経営幹部が職場のパワハラ対策の重要性を理解することで、取り組みが効果的に進むことが考えられるため、特に経営幹部に、対策の重要性を理解させることが必要となります。

(2)「ルールを決める」…就業規則に関係規定を設ける、労使協定を締結する、予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。

(3)「実態を把握する」…従業員アンケートを実施する。

(4)「教育する」…研修を実施する。パワハラは、人権問題、コンプライアンス、コミュニケーションスキル、マネジメントスキルなどと関連が深いものであることから、パワハラ研修をこれらの研修と同時に行うことで、より効率的・効果的なものとなると考えられます。なお、周知啓発や研修を行ったり、相談窓口の役割も担うなどのパワハラ対策を推進する担当者を養成することも、予防と解決の双方にわたって有効な手段と考えられます。

(5)「周知する」…組織の方針や取り組みについて周知・啓発を実施する。

以上のような対策を十分に実施して、二度とパワハラが職場で起きないような社内体制を構築してもらいたいと思います。なお、最後に、前述円卓会議で紹介された、ある企業の人事担当役員の言葉をご紹介します。この言葉は、パワハラ関係の様々な資料で引用されていますのでご存じの方も多いと思いますが、心にしみる良い言葉なので、ご紹介しておきたいと思います。

「全ての社員が家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。そんな人たちを職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり苦しめたりしていいわけがないだろう。」

(引用終わり)

 

上記記事に付け加えれば、パワハラ防止においては、「現場における実践」が必要であり、

そのためには、「パワハラ防止理念」(トップのメッセージ)、「パワハラ防止行動指針」を策定し、それを行動として現場において実施させることが必要だと感じています。

 

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