パワハラ防止を通して職場環境の改善を創造する職場環境改善工房

お問い合わせは090-7312-3133

事例紹介

パワハラ死、社内スキャンダルは脅しでもみ消し!?大手新聞社の巧妙な手口

2014年3月5日

ニュースというより、ウェブ雑誌に載っていた小説からです。

http://biz-journal.jp/2013/04/post_1985.html

(引用はじめ)

【前回までのあらすじ】
–巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、以前から合併の話を持ちかけていた。そして基本合意目前の段階にまで来たある日、割烹「美松」で、村尾、両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)との密談が行われ、終了後、松野と村尾はそれぞれの愛人の元へ帰っていった。そして数日後、4人による第2回目の会談が行われた–。

大都新聞社長の松野弥介は、熱燗をちびりちびりやりながら、日亜新聞社長の村尾倫郎が部下である小山成雄の不倫騒動について説明するのを聞いていた。しかし、その経緯の説明を終え、村尾がお湯割りに手を運ぶと、急に難しそうな顔つきになった松野がすかさず質問を発した。

「自殺未遂?」  「そうです。なかなか小山君が捕まらない彼女は、相当イラついていたんですね。ある大手銀行の駐在員に『小山を連れてきてくれないなら、私、死ぬわ』と電話してきたんです」  「それはとんだとばっちりだ。びっくりしたろうね」  「ええ、その駐在員がうちに電話してきたんです。電話に出たのが僕だったんです」  「それでどうしたんだ?」  「そりゃ、僕だって慌てましたよ。自分の部下の騒動ですから、多少は知っていました。でも、プライバシーの問題でしょ。支局長も含め、見て見ぬふりをしていたんですけど、自殺するとなると、事は重大です。僕が彼女の宿泊しているホテルに駆けつけました」  「そりゃ、そうだな」  「ホテルに駆けつけ、フロントで事情を話し、部屋を開けてもらったんです。部屋に入ると、彼女はベッドに横たわっていました。剃刀で手首を切っていましたが、傷は浅かったんです。すぐに、救急車を呼んで病院に運びましたよ。命に別状はなかったですけどね」  「ふむ。でも、小山君の今の奥さんは、その補助記者の女性なんだろ?」  「そうです。子供も3人いるよな。小山君」

小山は俯いたまま、苦笑いするだけだった。

「その自殺未遂事件を起こした、姉さん女房の方はどうなったんだい?」  「その一件で彼女も少し弱気になりましてね。ちょうどその時、ただならぬ事態になっているのを知った小山君の親父が飛んできたんです」  「親父は何をしたんだ?」  「小山の実家は大阪の船場の老舗繊維問屋です。次男が小山です。その頃はまだ、実家の羽振りはよかったんでしょうね。親父が彼女と話したんですよ。彼女の両親は早世し、兄弟もなく、小山と結婚した時には天涯孤独でした。親父さんは可哀想だと思ったんでしょうね。一生面倒を見ると約束したらしいんです」  「そういうことか。それで、円満に離婚、不倫相手と再婚したんだな」  「ええ、もうしこりはないでしょうね。でも、それと関係あるかどうかは知りませんが、実家の問屋は人手に渡ってしまいましたけどね、そうだよな、小山」  「もういいじゃないですか、この辺で。あまりいじめないでくださいよ」

しかめ面の小山が泣きそうな声で哀願した。

「騒動の代償は大きかったということだな。小山君は親父さんに足を向けて寝られないな。由緒ある老舗問屋を潰したんだからな。よほど次男の君が可愛かったんだろうな」

松野は少ししんみりした調子になったが、まだ矛を収めなかった。

「でもな、この事件、知る人ぞ知る、という話だよな。シークレットじゃないぞ」  「それはそうですけど、日亜社内の現役で知っている人間は少なくなっていますし、もうスキャンダルで表に出ることもないですよ。2つのSと言っていいんじゃないですか」  「そんな話じゃない。日本の大企業で、小山君のような男を事業の要のポストに就けるところはないよな。安心はできないぜ。20年以上前のスキャンダルでも、その地位によっては蒸し返される恐れはある。我々は、普通の大企業じゃ絶対やらないような人事をやっているわけだからな。前妻の姉さん女房が騒ぐ心配はないのかね。まだ健在なんだろう?」  「音信不通のようですが、亡くなったという話は聞いていません。そうだよな、小山君」

当惑気味の小山がしぶしぶ頷くと、村尾が続けた。「小山君の親父さんが一生面倒を見ることにしたんですから、騒ぐ心配はありませんよ。親父さんが亡くなって、老舗問屋を継いだ兄貴が豹変すれば、別ですが……」  「老舗問屋は人手に渡ったんだろ? それだと、兄貴が豹変する可能性はあるじゃないか」  「そこまで心配したらきりがありません。それに、うちはゲシュタポを使って、どんなつまらないことでも表に出ないように万全の態勢を敷いています。それは自信があります」  「え、本当かい?」

疑わしい眼つきの松野が、からかうような調子で突っ込んだが、村尾は自信満々だった。

「蟻一匹逃さない、と断言できます。実際、今ではうちのスキャンダルはどんな小さな媒体でも載りませんよ。たとえば、個人のブログとかホームページもゲシュタポの部下が常時見ていて、少しでもうちに都合の悪いことが載ったら名誉棄損やプライバシー侵害をちらつかせて脅しをかけます。効果抜群です」  「君のところは、そこまで徹底してやっているのか。うちは、そこまではしていないな」  「2つのSを抱えた連中で経営を牛耳る体制をつくっている以上、うちのような体制を取るべきです。合併後は任せてください。表に出ない盤石の体制を築きます」  「そうか。頼もしいな。君の言う通りにしよう。だが、今日は身体検査だ。まあ、姉さん女房の件はもういいが、小山君の2つのSはそれだけじゃないだろう」

松野は口元にいわくありげな笑みをたたえ、話題を変えた。

「小山君には、ほかに大した2つのSはありません。先輩は何を聞いているんですか?」  「パワハラもあるんじゃないか? もっぱら、そういう噂だぞ」  「上に都合のいい部下は、下にはきついんです。でも、問題になったケースはないですよ」  「おいおい、そんな断言して大丈夫なのか」  「パワハラ的な行動が社内の一部で問題になることは結構あります。でも、社外で噂になるようなことはなかったはずです。先輩は何か知っているんですか?」  「ほら、君のところの整理部長で、勤務中にくも膜下出血で急死した奴がいただろう」  「ええ、いましたよ。2年ほど前ですね。でも、遺族には手厚い支援を取り、労災認定を求めるといった事態にはなりませんでした。だから、何も問題はありません」  「でもな、くも膜下出血で急死する10分くらい前の編集部長会で、小山君がその部長を激しく面罵したというじゃないか。うちの連中にはそう伝わっている」  「編集部長会で厳しく叱責したのは事実です。とにかく、要領の悪い奴でしてね。しょっちゅう、小山君が怒鳴りつけていたんだよな」  「ええ、まあ。建前と本音がわからん奴でした」

小山が頭を掻きながら、小声で答えた。

「その時は、何が原因だったんだ」

小山が口ごもっているのをみて、村尾が助け舟を出した。

「ある大企業の不祥事の記事の扱いについてだったよな」

小山が頷くのを見て、村尾が続けた。

「その大企業はうちの広告、販売の両方ともお得意さんで、『記事の扱いはできるだけ控えめにお願いします』と頼んできたんです。小山君が『大したニュースじゃない』と天の声を発し、社会面のベタ(見出し一段の記事)にしたんです。それに異を唱えたんです」

「それじゃ、怒鳴りつける以外に手はないかもしれないな」  「ジャーナリズムの建前からはベタじゃまずいですよ。でもニュース判断は人それぞれという面があります。それがこの商売のいいところで、上意は絶対なんです」  「本音と建前の区別もつかないような奴が悪いと言うわけだな。だが、くも膜下出血を起こす10分前だから、関連がないと言い切れるのか?」  「それはわからないんです。遺族と労災認定をめぐって揉めれば、裁判所などの判断が出ますが、それを回避すれば、問題は起きないんです」  「どういうことだ?」  「叱責が原因で、くも膜下出血で亡くなったんではないか、というような記事がどこかに載ったとしましょう。その記事をうちが名誉毀損で訴えれば、相手は立証できないから、こっちの勝ちなんです。だから、名誉毀損をちらつかせると、表には出ないんです」  「それでも、人の口には戸を立てられないということだな」  「噂になるだけなら問題ありません。それより、そろそろ、先輩の方も話してくださいよ」

(引用終わり)

連載なので、中途半端な終わり方ですが、パワハラについて、ちょっと触れていたので、紹介しました。